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フルアニ
タイトル
  • フルアニ

    メーカー
  • Leaf

    評価
  • 8点




  • review

     「みつみ絵が動く」

     この宣伝文句に踊らされた人はかなり多かったのではなかろうか。少なくとも私は聞いた瞬間に電流が走った(笑)。まあそれ程では無かった人が大半だと思うが、名実共にエロゲ絵師最大の重鎮『みつみ美里』氏の絵が動くというのはエロゲーマーには心躍るものがあったというのは事実であっただろう。氏の出世作『Pia♥キャロットへようこそ』から実に十年以上に渡り人気絵師のトップに君臨し続け、そしてまだまだ期待を持たせる氏は、流れの速いこの業界での偉人と言っても過言ではない。

     ただゲームの出来はというと、恐らくは殆どのプレイヤーの期待を下回った形になってしまった。ゲーム部分は麻雀→濡れ場→麻雀……という展開で、ストーリー性皆無。一周のプレイ時間も一時間ほど。さらに一番肝心な麻雀部分についても相手が弱すぎて麻雀としての楽しみもゼロという次第。正直弱いだけなら許せるのだが(エロが早く見れて)、麻雀対戦後に流れるムービーは三パターンあり、それは勝利、敗北、特殊勝利となっていて、ムービーを全て集めたいのならその弱い相手に負けなければならない。それがかなりの至難(笑)。

     いくら危険牌を切ってもあたらない。あたらない。不思議に思い、相手の手を覗くとノーテン。そんな展開が下手をすると十局以上続く。特に序盤は終わりが見えないノーテン合戦。向こうが聴牌をしないのでこちらがもらったノーテン罰符で勝ってしまう。もはや自分が何をしようとしているのか分からなくなる始末。更に特殊勝利についても、その勝利条件が様々なのに係わらず条件の説明は一切無し。一万点以上離して勝利するのが条件なこともあれば、三カンツしてから勝利などもあり、見つけるのは相当に難しい。

     しかしながら「カリスマ絵師みつみ氏の絵が動く」という謳い文句を効果的に宣伝したLeafの販売戦略は非常に上手かった。体験版の配布は一切無しで、ムービー配布を少しのみ。「エロゲ麻雀はあまり良い出来のものが少ない」というのは今でも常識だが、当時のLeafはその常識を覆してくれるかもしれないという期待が持てるほど優良な作品を作り出していたので、みつみ絵が動くという宣伝文句と相まって、購買層は非常に期待してしまうというのを分かっていた上での宣伝だったのでは?と勘繰ってしまうほど情報の出し方は巧みだった。そういう意味では褒められたのもではないが、今になって思うと「うまくやったものだな」と感心してしまう。

     肝心の「動くみつみ絵」について。正直なところ、氏の絵のまま動くと思っていると残念な結果になってしまうかと思う。そもそも氏の柔らかいタッチは細かい線から成り立っていて、そういった絵は、動画との親和性は残念ながら低い。キャラデザインは氏らしい可愛らしいものだが、それを動画に起こしてしまうと魅力は半減、というよりもキャラによっては違和感すら覚えたり。「みつみデザインキャラが動く」程度に思っておくのが正しいユーザー像なのだろう(笑)。

     それでも絵自体は割とぬるぬる動きエロい感じであり、さすがLeafとも言うべきか、そこいらのムービーエロゲとは一線を画すくらいにはきっちりとしている。低予算なアニメよりも恐らく動いているであろう。そういった意味では確かに『フルアニ』の名に恥じぬ出来ではあった。ただストーリーを曲がりなりにも期待して身としては、回想部分にあるエロ以外のストーリー皆無でただ動くだけのムービーには哀愁を感じ得ないところだが。